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楊令伝15

2013年08月11日 03:13

楊令伝 15 天穹の章 (集英社文庫)楊令伝 15 天穹の章 (集英社文庫)
(2012/08/21)
北方 謙三

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北方謙三/楊令伝読了。
時間がたてばまた解釈は変わるのだろうけど、
読み終えた直後の感想として、楊令伝は悲しい。
老い、目標を見失い、皆、無意識の中で
死に場所を捜している。

水滸伝がどこか淡く純真な三四郎とすると、
楊令伝は答えのない混沌・暗闇の中で煩悶するそれからのよう。
門にあたる岳飛伝にて三部作をどのように終わらせるのか、
氏の新作がやはり気になる。
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田舎の紳士服店のモデルの妻

2010年12月05日 20:22

田舎の紳士服店のモデルの妻田舎の紳士服店のモデルの妻
(2010/11)
宮下 奈都

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次第に狭まっていく無限であったはずの自分の可能性、
客観的に定義づけられていく自分自身を、いかに納得し、
時に妥協し、前向きに捉えていくのか。

漱石の「それから」でも描かれたその現実と理想とその折合い
という命題を、夫の都合で田舎に住むことになった妻の視点を
とおして描く。

中央と地方、妻と母、自分の立ち位置・役割への反発と受容、
それらいくつかの対となる軸をとおして描かれるのは、
アトム(原子)化する家族と、それを認めたうえで、それでも
結びつこうとする人間の姿だ。

人間は本質的にアトムな存在である。
ただし、相互補完的な分子でもある。
ふとした瞬間、一瞬かもしれないが何かを共有できる瞬間がある。
それを発見できたとき、人間は人間としての意義を見出すのだろう。

浴室

2010年09月21日 01:14

浴室 (集英社文庫)浴室 (集英社文庫)
(1994/11/18)
J=P・トゥーサン

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浴室の境界性。
今日と明日の境界。飾ることと裸の境界。
清潔と不潔の境界。高尚と低俗の境界。

浴室での人のありようは、文字通り裸だ。

浴室の持つ境界性は、百年の孤独、フラニーとゾーイー
といった他作品にも散見される。

* * * * * * *

私の見る悪夢は大体決まっている。
数字が三つ出てきて、その数字が頭の中でグルグル
とまわり続けるのだ。
組み合わせとして多いのは、3と7と11。
3*11/11*7*3/7*3*11/7・・・・・・・・・・・

高熱がでて、うんうん唸っている時は
たいてい三つの数字との果て無き不毛な戯れ
が頭の中で繰り返されている。

(なぜか足し算と引き算はでてこない)

哀しみの女

2010年09月05日 23:46

哀しみの女―五木寛之の恋愛小説 (ポプラ文庫)哀しみの女―五木寛之の恋愛小説 (ポプラ文庫)
(2009/06/10)
五木 寛之

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エゴン・シーレの「哀しみの女」に触発された五木寛之
によるシティ・ロマン。

決められない。
選択肢から、ひとつを決めることが出来ない。
ひとつを選んだ際に生ずる、もうひとつの喪失に
不安と怖れを感じ決断が出来ない。
決めるということは、もう一方の可能性を失くす
ということなのだ。

結局のところ、無いものねだりなのであろう。
無くすことを惜しいと思うばかりに、ズルズルと、
現状の延命を図ろうとする。

一歩、成長するためには決断をすることだ。
失くす事を噛みしめることだ。

一方の道を閉じることで、ようやく選んだ道の
地平線を見渡すことが出来るのだろう。


妻への恋文

2010年08月17日 23:45

妻への恋文 (新潮文庫)妻への恋文 (新潮文庫)
(1996/02)
アレクサンドル ジャルダン

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狂気は、その当人にとっては極めて正当であり得る。
その狂気の構成要素を把握し、その思考がトレース出来た
とき、怖れは愛に変わり得る。

妻の心を取り戻すために、燻火となってしまった
愛を再び燃え上がらすために、他人になりすまし
妻を誘惑する話。
その成就は愛する者を手に入れた喜びと、愛する者を
失った悲しみという背反する感情を同時にもたらし、
新たなる狂気を呼び起こす。
やがて、その狂気が限りなく透明に近い純粋で構成
されていることに気がついた妻は、、、。

安部公房は「他人の顔」という本作と同じプロットの
小説を書いている。本作が決定的に他人の顔と違うのは、
その夫の愛の方向性が結局のところ自己にあるのか、
他者にあるのかという点であろう。
本質的に自己へ向かう愛は結局のところひとりよがり、
理解のされない狂気となり、破綻する。
同じプロットでありながら、本作と他人の顔の
その本質的な違いが、本作を最終的に胸を震わせる感動を
もたらす作品たらしめているのであろう。

10年後、今とは違う立場になっているかも知れないとき、
もう一度読みたい作品。





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