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もう29歳、まだ29歳

2009年08月04日 00:16

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もう29歳、まだ29歳 (新潮文庫)
(1993/03)
白石 公子

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白石公子によるエッセイ。
彼女が29歳のころの作品。29歳という微妙な年齢。
社会からは重んじられるわけではなく、軽んじられるわけではなく、少女のような奔放な恋愛はする気にならず、自分は自分と信念とプライドを持っていても周りの変化に焦りと孤独感を感じずにはいられない。
そんな、20代前半とは明らかに違う29歳という微妙な内面、微妙な20代前半との差異を描いた作品。

性別は違うものの、私自身20代後半に差し掛かり、(最近、アラサーですねとよく言われるようになった!)その微妙な心模様の変化には「そうそう、わかるわかる」と共感できる点が多々あった。

ライトで読みやすい文体に、微妙な真理を描く彼女の文章は秀逸だ。

(結婚願望ってあるの?と問われて)
「幸せなお嫁さんとはどういうものか考えてもみなかった。私は夢見る少女ではなく、どちらかといえば、リアリストであった。それは冷めていることではない。具体的に見えてこないと考えられないのだ。カタチのないものに対して、憧れることもなければ、拒否もない。(P129より)」

この感覚には共感せずにはいられない。
同じ感覚の人がいたのかと、びっくりしました。

うさぎの行きあたりばったり人生

2009年06月20日 17:12

うさぎの行きあたりばったり人生 (角川文庫)うさぎの行きあたりばったり人生 (角川文庫)
(2002/11)
中村 うさぎ

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中村うさぎは頭がいい。

クレジットカードの使用限度額600万円を、「どーぞどーぞ、600万円使ってくださいよ」と解釈し、毎月300万円をブランド品の購入に金を突っ込み、その収入をはるかに超える支払いのために出版社からの版権の前借、サラ金からの多重債務地獄へ突き進む。
「ブランド品を購入するという快楽」のために。

消費の対象をブランド品からホストクラブにスイッチし。お気に入りのホストに何百万円単位の金をジャブジャブ突っ込む。
「お気に入りのホストが売上げランキング上位に上がっていくという快楽」のために。

中村うさぎは破天荒なことをしながらも、責任から逃げない。
自分自身の人生に責任をもつのは、自分自身に他ならない。
だからこそ、常軌を逸すると思われようと、その道を突き進む。

「手にした武器は『開き直り』と『負けん気』だけ。
 こんな女に明日はあるのかっ!?あるといいなぁ、きっとあるさ。」

謝罪の時代

2009年06月14日 23:39

謝罪の時代―昼寝するお化け〈第8集〉 (昼寝するお化け (第8集))謝罪の時代―昼寝するお化け〈第8集〉 (昼寝するお化け (第8集))
(2008/11)
曽野 綾子

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曽野綾子によるエッセイ。
曽野綾子は地に足がついた作家だ。
その地を形成しているのは、キリスト教神学・哲学による論理的基礎と、戦後日本、女流作家として歩んできた自身の軸の強さだ。現象学-解釈学の狭間を行き来し、鍛錬されたそのものさしからの論考は気づきが多々あった。

中央大の卒業生による大学教授殺害事件、弱者を簡単に切捨てにする社会、そういった事件・社会の背景にある病んだ個人と社会の論理構造を暴く上で、本書の示す論考は参考になるだろう。
根無し草で、自己愛に溺れた個人をつくりだす、酸欠した社会がそこにはある。

(最近、キリスト教信者、もしくは西欧哲学に精通した作家の著作を読む機会がなぜか多い。
佐藤優・曽野綾子・遠藤周作・米原万里・・・
同時に彼らに共通しているのは、古典小説の門をくぐっている点だ。)

MEMO
・真理の解釈学としての小説
 「昔の子供はよく小説を読んだから、『この場にいない人のことはすぐに忘れる』とか、
  『今日の状態が明日も続くことはほとんど無い』とかいう真理を、文学を通して知ったのである。
  それらは別に道徳的なことでもないし、高級な知恵でもないが、ずいぶんと使うことの多い
  処世術であった。(P64 より)」

・「人生で、自分独特の眼を養うことは、成功した人生を送る秘訣である。
 今世間を動かしているのは空気である。」

インテリジェンス人生相談

2009年05月31日 21:45

インテリジェンス人生相談 [社会編]インテリジェンス人生相談 [社会編]
(2009/04/25)
佐藤 優

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インテリジェンス人生相談 [個人編]インテリジェンス人生相談 [個人編]
(2009/04/25)
佐藤 優

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SPA!に連載中の佐藤優による「インテリジェンス人生相談」が書籍化。
佐藤優が一般の人からの人生相談を受け付ける。

様々な一般の方からの人生相談に、シモネタ・神学的論考・現実的アプローチを持って、的確に、時に突飛に、アドバイス与える。

佐藤氏のアドバイスの根底にあるのは、優しさだと思う。
自己肯定と、憎しみに捕らわれるよりも幸せを追求すべきというスタンス。
世の中には、その構造を大きく変えないことには、解決し得ないことも存在する。
原因が制度疲労、構造的なものであるにもかかわらず、新自由主義の元では、
「自己責任」の一言で片付けられてしまう。そんな社会は本当に幸せな社会なのだろうか。
安心出来ず、綱渡りを余儀なくされる社会が。

個人としての成長を促しながら、社会分析を元に「あなたが悪いのではない」と示してくれるアドバイスは、殺伐とした今を生きる人々の心に、砂漠に撒く水のように染み込む。

軽く読める本だが、日々の悩みの解決へのちょっとしたヒントが見つかるかも。

新人だった!

2009年05月27日 00:46

新人だった! (角川文庫)新人だった! (角川文庫)
(2007/04)
原田 宗典

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原田宗典によるエッセイ。
時系列に沿った連作方式なので小説のようにも読める。

テーマは、彼の新人時代。
大学を留年し、父親のつくった莫大な借金に前途が見えなくなった、モラトリアムをもてあます22歳大学五年生の春、ふとした偶然で働き始めたコピーライター事務所にて彼はアルバイトながらも新人としての一歩を踏み出す。

自分の名刺がはじめて支給され有頂天になった日、実家の夜逃げ、父親との断絶、、、
華やかな広告業界の末端にいながら私生活は極貧の二重生活のなかで新人、原田宗典は見るもの触れるもの全てが新鮮で、かつ、それら全てに畏怖の念を持つ新人時代をすごす。

新人というおたまじゃくしから片足が一本にょろっと出ているような私は、本作に非常に感情移入をしてしまった。
誰しもが新人だった。その新人時代の希望と畏れに満ちた微妙な心模様を快活に描き出す好著だ。


(著者の名前が私の本名と同じなので作中の「おい、原田ぁ!」にどきーんとしてしまった。)
(原田氏の同時代をテーマとした小説「19・20」も必読)


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