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動脈列島

2009年11月13日 00:25

動脈列島 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)動脈列島 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)
(1996/05)
清水 一行

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以前のコラムで、中途半端なミステリィ論を書いたことがあった。
その際に書いたことはミステリィは、トリックに重点が置かれた本格と
社会事件をモチーフにするなどし政治的要素を加えた社会派の二つの
潮流に分かれるということであったが、本作は上記の内、社会派に属する
サスペンスミステリィである。

時代は高度経済成長を続ける1975年。新幹線網構想が提唱され、
新幹線網が敷設、世の中が豊かに、便利になっていった時代。
しかし、時代の光の影には新幹線公害という負の問題もまた存在し、
その害ゆえに人命までもが犠牲となっていた。
本作の犯人は、公害の存在を無視しつづけ、もはやエゴで新幹線網構想を
推進しようとする国家に対し、「新幹線転覆」の挑戦状を叩きつける。

国家(政府-国鉄-警察)と犯人の裏の裏を読みあう心理戦。
国家の威信と人権。理念とヒロイズム。
「国家百年の罫を図るためには、少しの犠牲は仕方がない。これも国家のためさ」
「利益を受けているものがいるから、加害者はさらに尊大になり反省しようとしない」
犯人は、国家への挑戦として新幹線転覆を果たすのか、
国家は犯人の計画を阻止し、国家としての威信を守ることができるのか・・・。

実在する公害を巡り、正義とは何かを考えさせられる秀作。

暗黒館の殺人

2009年10月10日 03:12

暗黒館の殺人〈1〉 (講談社文庫)暗黒館の殺人〈1〉 (講談社文庫)
(2007/10)
綾辻 行人

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暗黒館の殺人〈2〉 (講談社文庫)暗黒館の殺人〈2〉 (講談社文庫)
(2007/10)
綾辻 行人

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暗黒館の殺人〈3〉 (講談社文庫)暗黒館の殺人〈3〉 (講談社文庫)
(2007/11)
綾辻 行人

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暗黒館の殺人〈4〉 (講談社文庫)暗黒館の殺人〈4〉 (講談社文庫)
(2007/11)
綾辻 行人

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全4巻、2000ページ読了。
長い。通常長編といわれるミステリィはせいぜい400ページぐらい、
大長編といわれるドグラ・マグラでさえ800ページなのに、その二倍を超える分量。
ただ、劇的に面白い。
気がつくと解決編の4巻にたどり着き、その圧倒的なスケールの解決編に度肝を抜かれる。

新本格派の代名詞ともいえる作家、綾辻行人は本作品で金字塔を打ち立てた。
夢野久作がドグラ・マグラを、江戸川乱歩が孤島の鬼を、志賀直哉が暗夜航路を書いたように、
作家は時に神を作品に宿すことがある。魂がにじみ出る作品を。

本作品において綾辻氏は推理・探偵小説を先人への敬意を汲みつつ叙事詩へと昇華させた。

尚、綾辻氏の作品を読まれるのであれば、本作品は後回しにしてほしい。
発表順に、
十角館の殺人、水車館の殺人、迷路館の殺人、人形館の殺人、時計館の殺人、
黒猫館の殺人を経て本作を読むことをオススメする。
物事には順序というものがあるものだ。

虚空の逆マトリクス

2009年09月14日 00:28

虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX) (講談社文庫)虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX) (講談社文庫)
(2006/07/12)
森 博嗣

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森博嗣による短編集。
収録されている「トロイの木馬」のIT用語を多用した近未来サスペンスのタッチは
理系ミステリィ作家の異名をとるいかにも彼らしい。
それでいて、随所に幻想文学的な表現、人間の本質論を織り込む、
そのバランス感覚が彼のオリジナル性なのだと思う。

SF、小品、着想、ハードボイルド&スピリチュアルまで。懐の広さが垣間見える短編集だ。

(「いつ入れ替わった?」は数年前にS&Mシリーズにはまった者としては読んでいて
 ニヤニヤしてしまった。どうでもいいことだが、ミステリーではなくミステリィ、
 ファクターではなくファクタと書くのは彼の影響である。                 )

ドミノ

2009年09月09日 01:08

ドミノ (角川文庫)ドミノ (角川文庫)
(2004/01)
恩田 陸

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東京駅を舞台に繰り広げられる、恩田陸によるドタバタコメディ。
先日読んだユージニアとは違う、彼女の別の側面を見せてくれる作品。

恩田陸は守備範囲の広い作家だ。
その裏側には様々な要素が垣間見える。
そして彼女を構成するそれらの要素が有機的に絡みあい、
本作のようなエンターテイメント小説の成立を可能にしている。

あえて言うのであれば、彼女は女流筒井康隆だ。
今年一番笑った小説。

麦酒の家の冒険

2009年09月04日 00:42

麦酒の家の冒険 (講談社文庫)麦酒の家の冒険 (講談社文庫)
(2000/06)
西澤 保彦

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山道で車がガス欠になり、夜中しょうがなく山道を歩き続けた先に一軒の家があった。
その家は変わっていた。家具も何もなく、そこにはエビスビールが96本あった。

誰が何のためにこの麦酒の家を用意したのか。
ある境界条件から、それを最も論理的に説明しうる仮説を組み立てる安楽椅子ミステリー。



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